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商標登録の重要性

最近のUAE最高裁判例から、商標権侵害訴訟における、興味深い判決を紹介しよう。
今回の判決から得る教訓は「世界的に認識されている商標であってもUAEでは商標登録をしておくこと」。

原告

商標権侵害訴訟の原告法人A社は1987年以降世界的に認識され、1990年以降米国で登録商標を維持する米国の粘着テープ製造業者。

被告は、同じく粘着テープを製造するUAE企業B社。

B社がA社とほぼ同じ商標をUAEで登録したのは2000年。登録カテゴリーは「Class 17: adhesive tapes」。

A社はUAEで自らの商標登録は行っていない。A社が自社商標のUAE登録をしていない理由根拠は2002年UAE商標法にある次のくだり。「世界的に認知されている商標の登録をUAE国内で登録するかどうかはその商標所有者の裁量で決めることができる」。

原告A社が求める裁判命令は、B社の商標登録をキャンセルし、登録省庁である経済省は商標登録者をA社に変更すること。

最高裁判決

UAE最高裁の判決は、第一審、控訴審の判断を支持し、原告米国A社の敗訴。

大法廷(裁判官全員による合議法廷)は判決の中でA社商標は「世界的に広く認識されている」ことを認めたが、B社へUAEでの商標登録者として、A社とほぼ同じ商標をB社が使い続けることを認めた。

以下、その判決理由。

1.B社のUAEにおける商標登録は、2002年新商標法が施行される前の2000年に行われたの
  で、本訴訟には1992年UAE商標法(Trademark Law 37 of 1992=旧法)が適用される。
2.旧法は、異なる製品であれば、無登録先行商標と類似する商標を使用することを妨げてはい
  ない。
3.A社の粘着テープは広範囲用途の一般テープであるが、B社のテープは熱断熱で使われる専
  門性のあるテープである。両社のテープは形状も用途も異なり、結果として異なるカテゴリー
  の消費者が使用する。したがって、(同じ商標が)B社製品を利用する専門的な性格を有する
  消費者へ混乱(混同の生じる恐れ)を招くとは考えにくい。

判決のロジック

判決理由にロジックが見受けられない。以下、このブログで取り上げた理由。

旧法第10条は、「同class(=カテゴリー)へ同じ或いは類似商標を登録することはできない」とある。「同製品」ではなく「同クラス」。

つまり、商標登録が制限されているのは、大法廷が主張する「同製品」ではなく「同カテゴリーの製品」のはずである。A社とB社の製品は同カテゴリーである(class 17:adhesive tapes)。

最高裁判決であるため、上訴の道はない。A社にとっては納得できない判決理由であろう。

今回の訴訟は、パッシングオフ(passing off =自分の商品が、すでに確立したのれん=goodwillを持つ他業者の商品であるかのような印象を消費者に与える取引行為)を根拠とした損害を求める裁判ではない。パッシングオフ訴訟の原告は、訴権を主張するために、のれんが確立されていることを立証しなければならず、原告の被った損害を定量化できなければならない。

商標は登録すると、「登録主義」の原則において、侵害に対して自動的に保護される。商標は一種の動産であり、他の人が商標権者に無断でそれを使用すれば商標権の侵害となる。当然のことながら、商標は商品の識別性を有していなければならない。ところが、その識別性についてUAE大法廷が(例え旧法根拠と言えども)最初の使用者の有名な商標と非常に類似した商標を後行使用者に認めるのであれば、リスクを完全にゼロにするためには、商標の先行登録しか手立てはない。(2010.9.17)



プロフィール
 金城昭一  
 金城マネジメントコンサルタンツ代表 www.kaneshirolawyers.com 
 資格:豪州弁護士 学歴:経営修士 (MBA)、会計修士 (MAcc)、法学士 (LLB)、 
 社会学士 (BA)  
 専門分野:訴訟・国際商事仲裁、会社法、不動産関連法、商法、労働法、税法。
 主な著書:『21世紀の豪州不動産投資』(1997)、『豪州の不動産共同投資』
  (1999)、『オーストラリアのプロパテイ・トラスト』(2003-共著、住信基礎研
  究所)、『UAEの労働法』(2009)、『UAEの訴訟仲裁制度』(2009)。
 趣味:家族と過ごす時間、旅、サッカー、野球、映画鑑賞。
 1956年日本生まれ。
 
UAEの法律 - UAE LAWS 
  http://blog.goo.ne.jp/inochiyoshieinochi

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